水戸室内管弦楽団
Mito Chamber Orchestra
オーケストラ水戸市は、日本の近代化の幕開けに多大な貢献を果たした歴史都市である。江戸時代(1603〜1867)、徳川御三家のひとつとして栄え、徳川慶喜公は、徳川幕府最後の将軍として大政を朝廷に返還し、明治維新への道を開いた。日本三大名庭園の一つ「偕楽園」、江戸時代最大の藩校で多くの指導者、知識人を輩出した「弘道館」といった歴史文化遺産に恵まれている。水戸市は、そのような先進的精神を受け継ぎ、1990年に市制100周年を記念して、コンサートホール、劇場、美術ギャラリーを有する複合文化施設「水戸芸術館」を設立した。
水戸室内管弦楽団(以下MCO)は1990年、水戸芸術館の専属楽団として、初代館長・吉田秀和の提唱により誕生した。日本を代表する指揮者である小澤征爾が、2013年水戸芸術館の館長に就任すると同時にMCOの総監督となり、その運営にあたっている。メンバーは、ソリストやオーケストラの首席奏者として、世界的な活躍を続ける17名の日本人音楽家と5名の外国人音楽家たち。水戸芸術館で開催される定期演奏会は、小澤征爾をはじめ指揮者を迎える演奏会とともに、指揮者を置かないアンサンブルによる演奏会にも力を入れている。音楽家たちは、演奏会の度に、世界各地から水戸芸術館に集まり、集中的にリハーサルを行う。
日本人作曲家への委嘱も積極的に行っており、一柳慧〈汽水域〉、林光〈悲歌〉(95年度尾高賞受賞)、平義久〈彩雲〉などの作品が初演されている。またユニバーサル・ミュージック、DECCAレーベルなどからCD19枚、NHKエンタープライズなどからブルーレイ/DVD3枚が発売されている。
1996年からは東京・サントリーホールや大阪・フェスティバルホールなど日本各地で演奏会を行い、高い評価を得ている。さらにMCOは活動の舞台を海外にも広げ、98年にはハンブルク、チューリッヒ、ウィーン、ルードヴィヒスブルク、フィレンツェの5都市、2001年にはフィレンツェ、ウィーン、パリ、ミュンヘンの4都市にて小澤征爾指揮で公演を行い、「世界有数の室内管弦楽団」との評価を確立した。08年の第3回ヨーロッパ公演(ミュンヘン、フィレンツェ、マドリード)は、指揮者なしで実施。その実力を絶賛された。