ギドン・クレーメル

Gidon Kremer

ヴァイオリン
©Paolo Pellegrin

ラトビアのリガで生まれ、4歳の頃から父と祖父 (ともに優秀なヴァイオリニスト)よりヴァイオリンの手ほどきを受ける。7才でリガの音楽学校に入学。16才でラトビア国内の音楽コンクールにおいて優勝を果たし、その2年後にはモスクワ音楽院でダヴィド・オイストラフに師事する。1967年にエリザベート王妃国際コンクールに入賞すると、1969年にはパガニーニ国際コンクール、1970年にはチャイコフスキー国際コンクールと相次いで優勝した。ここからクレーメルの輝かしいキャリアが始まる。演奏会の回を重ねるにつれ、同世代の演奏家のなかでもきわめて独創性に富み、素晴らしい演奏家である、との彼への評判は世界でも知られるようになり、次第にトップ・ヴァイオリニストとしての地位を不動のものにしていった。
これまでにウィーン・フィル、ベルリン・フィル、アムステルダム・コンセルトヘボウ管を始め多くの世界のメジャー・オーケストラと共演。また、バーンスタイン、カラヤン、エッシェンバッハ、アーノンクール、マゼール、ムーティ、メータ、レヴァイン、アバド、マリナーなどの近年の屈指の指揮者との共演も多数行っている。
レパートリーは多様で古典派、ロマン派などのクラシック・スタンダードはもとより、ヘンツェ、ノーノやシュトックハウゼンといった20世紀の大作曲家の作品にも取り組んでいる。なかでも自身の出身地であるロシアやバルト三国の作曲家(シュニトケ、ペルト、カンチェリ、グバイドゥーリナ、シルヴェストロフ、デシャトニコフ等)による作品の発掘や演奏に熱意を傾け、それらの作曲家からも新曲を献呈されるなど、数々の知られざる名曲を紹介してきた。まだ世間にはあまり注目されていなかった作曲家も含め、伝統を重んじながらも現代的な解釈も取り入れた演奏スタイルで、クレーメルが音楽家として歩んできた過去30年を振り返っても、現代の作曲家と音楽ファンとを結びつけてきた彼のソリストとしての功績は特筆すべきものである。近年は特にポーランド出身、ロシアで活躍したミェチスワフ・ヴァインベルクの作品を精力的に紹介している。
レコーディングの数でもクレーメルは突出している。彼はこれまでに100枚を超えるアルバム収録に参加してきた。その際立った音楽性と楽曲の解釈は録音においても讃えられており、フランス・ディスク大賞、ドイツ・レコード大賞、エルンスト・フォン・シーメンス音楽賞などの国際的な音楽賞を多く授与されている。
1981年にロッケンハウス(オーストリア)にて親交のある演奏家とともに「ロッケンハウス室内音楽祭」を創設し、その後も毎年夏にはこの音楽祭が継続して開催されている。
1997年バルト三国から有能な若い音楽家の育成を目的とし、クレメラータ・バルティカ室内楽団を設立した。以来芸術監督として楽団とともに世界のあらゆる地域でツアーを行い、数多くの録音も残している(グラミー賞受賞作品含む)。
2016年には第28回高松宮殿下記念世界文化賞(音楽部門)を受賞している。
ヴァイオリンは1641年製の「ニコラ・アマティ」を愛用。
執筆活動もしており、彼自身の芸術哲学などをテーマにした4冊の著作がある。その内3作品は邦訳されている(ちいさなヴァイオリン―ギドン・クレーメル自伝』1995年、『ギドン・クレーメル 琴線の触れ合い』1998年、『クレーメル青春譜』2008年)。