【世界一流の音楽家から学ぶ】マスタークラス受講者の声 別府アルゲリッチ音楽祭 ≪25回記念特集≫

©石松健男

若手演奏家の育成を目的に、世界の一流演奏家によるレッスンを行うマスタークラス。
1998年の第1回音楽祭では、マルタ・アルゲリッチ自らが指導する初の公開マスタークラスが大きな話題を呼びました。
以降、イダ・ヘンデル、フー・ツォン、イヴリー・ギトリスをはじめ世界的な音楽家によるマスタークラスを開催しています。
今回、マスタークラスを受講し、現在第一線でご活躍されている音楽家の方々に当時の感想をお寄せいただきました。

第1回(1998年) 公開ピアノ・マスタークラス
講師:マルタ・アルゲリッチ

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私にとってアルゲリッチさんは、幼い頃から永遠の憧れの存在であり、おこがましくも目標であり、そして大好きなピアニストです。そんな憧れの存在から、18歳の時に別府で直接レッスンを受けるチャンスをいただけたことは、私にとって何ものにも代え難い大切な宝物です。レッスンでの一瞬一瞬を、今でも鮮明に思い出します。横で弾いてくださった音色の威力とオーラに、ただただ圧倒されました。アルゲリッチさんはますますお元気で、毎年日本でコンサートを開催してくださっていることに、一ファンとして大きな喜びを感じています。いつもチケットの発売日をチェックしているにも拘らず、出遅れています。これからも素晴らしい演奏で、世界中の聴衆に幸せを与えてくださることを、心より楽しみにしています。

第3回(2001年) 公開チェロ・マスタークラス
講師:ミッシャ・マイスキー

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私にとっては、世界的演奏家に直接ご指導いただける初めての機会でした。「CDやテレビで観た人が目の前にいる!」。そんな緊張でいっぱいでしたが、マイスキーさんのお人柄、そしてその演奏を目の当たりにして、こういう演奏家になりたい…という熱意に変わるのに時間はかかりませんでした。この1年後にたまたま京都駅でお会いした際も憶えてくださっており、とても感激しました。何より勉強になったのは、「一流の演奏家は人格も一流である」ということ。まずは相手を認め、リスペクトするところからスタートし、その人それぞれの音楽を大切にするということでした。私の演奏家人生を方向付けたマスタークラスであったと言っても過言ではありません。

第10回(2008年) 子どものためのヴァイオリン・レッスン
講師:樫本大進
第12回(2010年) 公開ヴァイオリン・マスタークラス

講師:清水髙師
公開ヴァイオリン・マスタークラス(2019年)

講師:竹澤恭子

これまで3 回、マスタークラスを受講させていただきましたが、毎回自分の音楽人生に、大きなきっかけや変化をもたらしてくれました。樫本大進さんには、それまで感じたことのなかった音楽の楽しさを、清水髙師先生には音楽を作る上でのアプローチの仕方を教えていただきました。竹澤恭子先生には、ショスタコーヴィチのヴァイオリンコンチェルトを見ていただき、その後N 響のオーディションに無事合格できました。どのマスタークラスも、自分が今演奏活動をする上で、なくてはならないものだったと感じていますし、マスタークラスがあったからこそ、今も音楽を続けられているように思います。このような貴重な機会を、地元大分で設けていただいた別府アルゲリッチ音楽祭には大変感謝しております。ありがとうございました。

第11回(2009年) 公開ヴィオラ・マスタークラス
講師:ユーリー・バシュメット

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当時、川本嘉子先生に師事していたご縁で、バシュメットさんのマスタークラスを受講しました。レッスンではブラームスのソナタを見てもらいましたが、フレーズの感じ方や歌い方を指摘され、「楽器を置いて歌いなさい」と言われて出だしを歌いました。「なんで歌うとできるのに!」と言われました(笑)。「楽器を持っても、歌うように」という言葉が印象的でした。マスタークラスでのひと時でしたが、彼のユーモアや人となりがレッスンを通じて感じられたことは、今でも感覚として心に残っています。本当に良い経験をさせていただき、感謝しかありません。今年は25周年というメモリアルな年ということで、今後もたくさんの素晴らしい音楽家が集まり、巣立つ場所であり続けてほしいです。

第13回(2011年) 公開ヴァイオリン・マスタークラス
講師:清水髙師

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開催25 回、おめでとうございます! 幼少期から地元大分で世界トップクラスのアーティストの演奏を聴けることは、今振り返ると大きな刺激・財産でした。毎年音楽祭を訪れていたため、当時はそれを当たり前と思っていたことが恐ろしいほど……。高3で受講した清水髙師先生のマスタークラスでは、自分の大好きなショスタコーヴィチの協奏曲を演奏しました。慣れて固定されてしまった弾き方に新たな風を吹かせてくださるもので、視界が開けました。自分が曲を演奏する意味や背景についてしっかり考えるようになったのはその頃から。言語化が大事なアメリカでの演奏活動に特に大きな意味を持ちました。心より感謝しています。

第15回(2013年) 公開ブラス・マスタークラス
講師:セルゲイ・ナカリャコフ

この度はアルゲリッチ音楽祭が25 回目の節目を迎えられたことを心よりお祝い申し上げます。 私がマスタークラスを受講させていただいたのは2013 年、大学4 年次でした。当時、コンクールの課題曲をご指導いただいたのですが、ミスを恐れ安定感を重視した硬い演奏をしていた私に「音楽は常に流れているのでもっと息と身体を自由にして」というアドバイスをいただき、のびのびと演奏でき、自分らしさを取り戻すことができました。また、世界レベルの演奏を間近で聴かせていただけたことで海外に興味が湧き、コンクールや留学に挑戦できたのだと思います。本当に貴重な経験をありがとうございました。別府アルゲリッチ音楽祭がますますご発展されることをお祈りしております。

第19回(2017年) 公開ヴァイオリン・マスタークラス
講師:イヴリー・ギトリス

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ギトリスさんのマスタークラスを受講しました。バッハのシャコンヌを、「神様からの愛に溢れるように」と仰ってくださったギトリスさんは、本当に愛に溢れた方でした。音楽だけでなく色々なことを気遣ってくださり、その時にいただいた多くの言葉一つ一つを、今でも心の中で大切にしています。別府でのご縁もあり、2022 年6 月と11 月、ギトリスさんへのオマージュのコンサートに出演し、アルゲリッチさんと3 回、お二人がよく演奏されていたフランクのソナタを演奏しました。経験したことのない世界に連れて行ってもらった、夢のような時間。人生をかけて大切にしたい、素晴らしい音楽体験をさせていただけたこと、そのご縁のきっかけをいただけた別府アルゲリッチ音楽祭の皆さんに、心から感謝しています。