曲目解説【5/17 巨匠たちのアンサンブル~極める】 第24回別府アルゲリッチ音楽祭

D.ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲 第2番 ホ短調 op.67
 1. アンダンテ~モデラート
 2. アレグロ・コン・ブリオ
 3. ラルゴ
 4. アレグレット

 旧ソ連の大作曲家ドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906-75)はこの三重奏曲に1943年秋着手している。そして第1楽章を仕上げつつあった1944年2月に敬愛する親友の音楽学者・評論家イヴァン・ソレルチンスキーが急死、衝撃を受けたショスタコーヴィチはこの作品を彼の追悼作品として8月に完成させた。当初から友人追悼のために書き始められたものではないが、全体に悲劇的の気分が支配的な傑作である。
 第1楽章(アンダンテ~モデラート)は冒頭に弱音器を付けたチェロのフラジョレット奏法で示される悲しげな主題でフーガ風に始まり、やがてテンポを速めて緊迫感溢れる展開を繰り広げる。第2楽章(アレグロ・コン・ブリオ[版によってはアレグロ・ノン・トロッポ])は重苦しくも活力溢れるスケルツォで、その中にショスタコーヴィチらしいシニカルな面も垣間見られる。第3楽章(ラルゴ)は悲劇的なパッサカリア楽章。ピアノの厳粛な和音進行の上でヴァイオリンとチェロがユダヤ風の特徴を持った主題を歌い、厳しい気分のうちに発展する。第4楽章(アレグレット)はやはりユダヤ民俗音楽の主題によるロンドで、クライマックスの後に第1楽章の主題が回帰、最後は先のパッサカリア主題の和声進行が示され寂しく閉じられる。

文:寺西基之

アルゲリッチ&マイスキーデュオ(当日発表)