【日時】 2022年5月28日(土) 開場14:00 開演15:00 終演17:30(予定)
【会場】 大分市 / iichiko総合文化センター iichikoグランシアタ
【出演】 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)、大宮臨太郎(ヴァイオリン)、
坂口弦太郎(ヴィオラ)、市 寛也(チェロ)



J・S・バッハ: ゴルトベルク変奏曲 ト長調 BWV988 前半
(ドミトリ・シトコヴェツキーによる弦楽三重奏編曲版)

J.S. Bach: Goldberg Variations in G major BWV988 The first-half(String Trio version by Dmitry Sitkovetsky)

 アリア、第1変奏〜第15変奏
 Aria, Variations No.1〜No.15
 バロック音楽の最後の高みを築いたヨハン・セバスティアン・バッハ(1685−1750)の後期の所産であるこの大規模な変奏曲は、本来チェンバロのための作品である。ライプツィヒ滞在の前ロシア大使カンザーリンク伯爵が不眠症に陥り、眠れない夜の気分を紛らすべくお抱えの少年チェンバロ奏者ゴルトベルクに演奏させるための作品をバッハに依頼してこの変奏曲が生れた、という言い伝え(真偽不明)から「ゴルトベルク変奏曲」の通称で親しまれてきた。
 曲は、主題(アリア)の後、主題の低音の動きに基づく30の変奏が続き、最後に主題が回帰する。構成的には主題〜第15変奏、第16変奏〜主題に大別され、各変奏は舞曲、カノン、フーガ、練習曲、フランス風序曲(後半開始の第16変奏)など、当時の諸様式を多様に応用するとともに、最後の第30変奏では民謡主題を組み合わせた書法(クォドリベト)が採用されている。また第3変奏は1度のカノン、第6変奏は2度のカノンというように、3の倍数の変奏ごとに音度の広がるカノンの形式をとるなど、数学的な緻密な全体構成を考慮している点がバッハらしい。まさに変奏曲史上の金字塔というべき傑作で、チェンバロのみならずピアノでも盛んに演奏されほか、様々に編曲され、特に名ヴァイオリニストのシトコヴェツキー(1954−)の編曲による本日の弦楽トリオ版は広く親しまれている。



J・S・バッハ:パルティータ 第2番 ハ短調 BWV826
J.S.Bach: Partita No.2 in c minor BWV826

1. シンフォニア Sinfonia
2. アルマンド Allemande
3. クーラント Courante
4. サラバンド Sarabande
5. ロンドー Rondeaux
6. カプリッチョ Capriccio

 ヨハン・セバスティアン・.バッハ(1685−1750)は後半生のライプツィヒ時代にチェンバロ(本日はピアノでの演奏)のための6つの「パルティータ」を作曲した。パルティータとはバロック時代の舞曲組曲の一種で、バッハはすでに「イギリス組曲」「フランス組曲」といったチェンバロ用の組曲で舞曲の様式化を追求していたが、「パルティータ」ではその方向をさらに掘り下げ、バロック様式の総合化をめざした彼ならではの高い芸術性を示す作品となっている。
 本日の第2番は6曲からなり、序曲にあたる堂々たる“シンフォニア”で始まる。これは、フランス序曲風の付点リズムによる荘重な部分、アンダンテの歌謡的な部分、速いフーガ部分という3つの部分からなる。続く“アルマンド”は声部の絡みが美しい。“クーラント”は前進的な運びが対位法的な書法と結び付いている。“サラバンド”もやはり対位法的な音の綾が本来の舞曲としてのサラバンドをはるかに超えた趣を生み出している。続く“ロンドー”はリズミックな主要主題がエピソードと交替しながら何度か現れる。最後の“カプリッチョ”はフーガ風に始まる活気に満ちた曲。その後半部分の冒頭は主題の転回形(音の上下の動きを逆さにすること)で始まる。



R・シューマン: 子供の情景 op.15
R.Schumann: Kinderszenen op.15

1. 見知らぬ国々から Von fremden Ländern und Menschen
2. 珍しいお話 Curiose Geschichte
3. 鬼ごっこ Hasche-Mann
4. ねだる子供 Bittendes Kind
5. 満足 Glückes genug
6. 大事件 Wichtige Begebenheit
7. トロイメライ Träumerei
8. 炉端にて Am Camin
9. 木馬の騎士 Ritter vom Steckenpferd
10. 向きになって Fast zu ernst
11. こわがらせ Fürchtenmachen
12. 眠る子供 Kind im Einschlummern
13. 詩人は語る Der Dichter spricht

 ドイツ・ロマン派を代表する作曲家ロベルト・シューマン(1810−56)は初期の1830年代にはピアノ曲の創作に力を注いだ。特に1830年代半ばからのピアノ曲は恋人クララ(のち夫人)への想いが創作の源泉となっている。そうした初期のピアノ曲の中でも特に親しまれているのが1838年の『子供の情景』で、クララのために書いた小曲の中から13曲を選んで曲集としたものである。シューマンのピアノ作品の中でもとりわけ優しい性格を持ち、そこにはクララへの愛が反映されているといえるだろう。
 全体は、遠い世界への憧れに満ちた「見知らぬ国々から」、面白い話を聞く子供の浮き浮きとした気分を表したような「珍しいお話」、子供の活発な動きを描いた「鬼ごっこ」、甘えん坊の子供の表情を捉えた「ねだる子供」、充足感に満ちた「満足」、決然とした様子の「大事件」、夢の世界へ入り込む「トロイメライ(夢)」、家庭の暖かい団欒を思わせる「炉端にて」、子供達の木馬遊びを描く「木馬の騎士」、真剣な子供の一途な態度を思わせる「向きになって」、怖い話を子供に聞かせているような「こわがらせ」、眠りの世界へ落ちゆく「眠る子供」、詩と音楽がロマンティックに溶け合うような「詩人は語る」からなる。



J・S・バッハ: ゴルトベルク変奏曲 ト長調 BWV988 後半
(ドミトリ・シトコヴェツキーによる弦楽三重奏編曲版)

J.S. Bach: Goldberg Variations in G major BWV988 The first-half(String Trio version by Dmitry Sitkovetsky)

 アリア、第16変奏〜第30変奏
 Aria, Variations No.16〜No.30
 同曲前半の項参照



L.・v・ベートーヴェン: ピアノ四重奏曲 第3番 ハ長調 WoO36-3
L.v.Beethoven: Piano Quartet No.3 in C major WoO36-3

1.アレグロ・ヴィヴァーチェ Allegro vivace
2.アダージョ・コン・エスプレッシオーネ Adagio con espressione
3.ロンド、アレグロ Rondo:Allegro

 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770−1827)は生地ボンにいた少年時代から才能が注目され、10代初めにすでにピアノ曲やピアノ協奏曲(正確にはチェンバロを想定)を試みている。現存する初の室内楽曲が14歳の時の3曲セットのピアノ四重奏曲WoO36(自筆譜にはやはりピアノでなくチェンバロと明記)で、死後の1828年に出版された。3曲とも修行期の作らしくモーツァルトや当時のマンハイム楽派などの影響が顕著だが、その中にも早くも彼らしい創意が窺える。本日演奏されるハ長調(初版では第3番だが、自筆譜では第1番。最近の新全集版はそれに従っている)の曲は、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタK.296の影響も指摘されている。当時のこのジャンルの様式に即してピアノ主体の書法が支配的だが、第2楽章以降は弦にも重要な役割を与えている点にベートーヴェン少年の意欲的な姿勢が見てとれる。
 第1楽章(アレグロ・ヴィヴァーチェ)は多様な楽想が現れるソナタ形式で、第2主題も長調の楽想の後、短調の別の楽想が現れるが、これはのちにピアノ・ソナタ第3番の第1楽章に転用された。第2楽章(アダージョ・コン・エスプレッシオーネ)の主要主題ものちにピアノ・ソナタ第1番の第2楽章の主題となるもの。第3楽章(アレグロ)は軽快かつ明快なロンドである。

解説:寺西基之

※曲目、演奏順、演奏者等は変更になる可能性がございますのでご了承ください。



公益財団法人アルゲリッチ芸術振興財団
874-0903 大分県別府市野口原3030-1 しいきアルゲリッチハウス
TEL:0977-27-2299 FAX:0977-27-2301