【日時】 2022年5月22日(日) 開場17:30 開演18:00 終演20:00(予定)
【会場】 別府市 /ビーコンプラザ フィルハーモニアホール
【出演】 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)、清水高師(ヴァイオリン)、
栗原壱成(ヴァイオリン)、小峰航一(ヴィオラ)、
辻本 玲(チェロ)、三浦一馬(バンドネオン)



J・-M・ルクレール:2つのヴァイオリンのためのソナタ ハ長調 op.3-3
J.-M.Leclair: Sonata for two violins in C major op.3-3

 1.アダージョ〜ヴィヴァーチェ Adagio〜Vivace
 2.アダージョ Adagio
 3.アレグロ Allegro
 ジャン=マリー・ルクレール(1697−1764)はバロック時代のフランスの音楽家である。舞踏家として出発するかたわらヴァイオリンを勉強、その後イタリアで名ヴァイオリン教師ソミスに師事した。美しい音色と優美さを特徴とする新しいヴァイオリン奏法によってヴァイオリニストとしての名声を確立したルクレールは、ルイ15世の楽団に所属したり、一時オランダで活動したり、1749年からはグラモン公の劇場の音楽監督を務めるなど幅広く活動したが、パリの自宅前で何者かに殺害されるという悲劇的な最期を遂げている。ヴァイオリン曲に優れた作品を残し、フランス的な趣味をイタリアの様式に融合させた彼の作品は以後のフランスのヴァイオリン音楽の発展の土台となった。
 全6曲からなる2つのヴァイオリンのためのソナタ集op.3は1730年に出版された。伴奏(通奏低音)を持たない作品だが、2つのヴァイオリンの見事な絡み合いが生かされたソナタ集だ。本日演奏されるのはその第3番。第1楽章は和音による短い導入(アダージョ)の後、2つの楽器が丁々発止にやり合う主部(ヴィヴァーチェ)が発展する。第2楽章(アダージョ)は哀愁を秘めたカンタービレ楽章で、切れ目なく躍動感に満ちた第3楽章(アレグロ)に続く。



J・S・バッハ:パルティータ 第2番 ハ短調 BWV826
J.S.Bach: Partita No.2 in c minor BWV826


1. シンフォニア Sinfonia
2. アルマンド Allemande
3. クーラント Courante
4. サラバンド Sarabande
5. ロンドー Rondeaux
6. カプリッチョ Capriccio

 ヨハン・セバスティアン・.バッハ(1685−1750)は後半生のライプツィヒ時代にチェンバロ(本日はピアノでの演奏)のための6つの「パルティータ」を作曲した。パルティータとはバロック時代の舞曲組曲の一種で、バッハはすでに「イギリス組曲」「フランス組曲」といったチェンバロ用の組曲で舞曲の様式化を追求していたが、「パルティータ」ではその方向をさらに掘り下げ、バロック様式の総合化をめざした彼ならではの高い芸術性を示す作品となっている。
 本日の第2番は6曲からなり、序曲にあたる堂々たる“シンフォニア”で始まる。これは、フランス序曲風の付点リズムによる荘重な部分、アンダンテの歌謡的な部分、速いフーガ部分という3つの部分からなる。続く“アルマンド”は声部の絡みが美しい。“クーラント”は前進的な運びが対位法的な書法と結び付いている。“サラバンド”もやはり対位法的な音の綾が本来の舞曲としてのサラバンドをはるかに超えた趣を生み出している。続く“ロンドー”はリズミックな主要主題がエピソードと交替しながら何度か現れる。最後の“カプリッチョ”はフーガ風に始まる活気に満ちた曲。その後半部分の冒頭は主題の転回形(音の上下の動きを逆さにすること)で始まる。



R・シューマン: 子供の情景 op.15
R.Schumann: Kinderszenen op.15

1. 見知らぬ国々から Von fremden Ländern und Menschen
2. 珍しいお話 Curiose Geschichte
3. 鬼ごっこ Hasche-Mann
4. ねだる子供 Bittendes Kind
5. 満足 Glückes genug
6. 大事件 Wichtige Begebenheit
7. トロイメライ Träumerei
8. 炉端にて Am Camin
9. 木馬の騎士 Ritter vom Steckenpferd
10. 向きになって Fast zu ernst
11. こわがらせ Fürchtenmachen
12. 眠る子供 Kind im Einschlummern
13. 詩人は語る Der Dichter spricht

 ドイツ・ロマン派を代表する作曲家ロベルト・シューマン(1810−56)は初期の1830年代にはピアノ曲の創作に力を注いだ。特に1830年代半ばからのピアノ曲は恋人クララ(のち夫人)への想いが創作の源泉となっている。そうした初期のピアノ曲の中でも特に親しまれているのが1838年の『子供の情景』で、クララのために書いた小曲の中から13曲を選んで曲集としたものである。シューマンのピアノ作品の中でもとりわけ優しい性格を持ち、そこにはクララへの愛が反映されているといえるだろう。
 全体は、遠い世界への憧れに満ちた「見知らぬ国々から」、面白い話を聞く子供の浮き浮きとした気分を表したような「珍しいお話」、子供の活発な動きを描いた「鬼ごっこ」、甘えん坊の子供の表情を捉えた「ねだる子供」、充足感に満ちた「満足」、決然とした様子の「大事件」、夢の世界へ入り込む「トロイメライ(夢)」、家庭の暖かい団欒を思わせる「炉端にて」、子供達の木馬遊びを描く「木馬の騎士」、真剣な子供の一途な態度を思わせる「向きになって」、怖い話を子供に聞かせているような「こわがらせ」、眠りの世界へ落ちゆく「眠る子供」、詩と音楽がロマンティックに溶け合うような「詩人は語る」からなる。



A.ピアソラ:ファイブ・タンゴ・センセーションズ
A. Piazzolla: Five Tango Sensations

1.眠り Asleep
2.愛 Loving
3.不安 Anxiety
4.目覚め Despertar
5.恐怖 Fear

 アストル・ピアソラ(1921−92)はアルゼンチンの音楽家で、早くからバンドネオンの演奏家として活動するかたわら、個性的なタンゴを作曲して注目された。一方で1940年代に作曲家ヒナステラに師事、さらに1954年にはパリに留学して作曲家・名教師のナディア・ブーランジェに学ぶなど、ヨーロッパの伝統音楽の基礎も身につけている。ブーランジェからタンゴの道を究めることを奨励された彼は帰国後にブエノスアイレス八重奏団を結成、さらに後にはピアソラ五重奏団を率いて、新しいタンゴのあり方を追求した。彼の芸術的なタンゴはジャンルを越えて世界的ブームを引き起こし、クラシックの音楽家によって盛んに取り上げられるなど、まさにタンゴの歴史に新たな頁を開くものとなった。
 「ファイブ・タンゴ・センセーションズ」はクロノス・クァルテット(前衛音楽の演奏で知られた弦楽四重奏団)との共演のために1991年に作曲されたもので、「眠り」「愛」「不安」「目覚め」「恐怖」の5曲からなる。概して弦楽四重奏をバックにバンドネオンが主役を務めるという書法がとられ、第3曲や第5曲は動的な性格を持つものの、全体的には晩年のピアソラの心境を映し出すような内省的なメランコリーが支配的な作品である。



R・シューマン: ピアノ五重奏曲 変ホ長調 op.44
R.Schumann: Piano Quintet in E-flat major op.44

1.アレグロ・ブリランテ Allegro brillante
2.イン・モード・ドゥナ・マルチア、ウン・ポーコ・ラルガメンテ In modo d'una marcia, Un poco largamente
3.スケルツォ、モルト・ヴィヴァーチェ Scherzo: Molto vivace
4.アレグロ・マ・ノン・トロッポ Allegro ma non troppo

 シューマンは1842年、室内楽に集中的に取り組んだ。そのためにまずハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなどの室内楽曲を研究していることからも、彼がいかに本気で室内楽に挑もうとしていたかが窺える。ピアノ五重奏曲もまさにこの年の所産で、ピアノと弦楽四重奏が室内楽的に結び付けられるとともに、しばしば協奏風に相対し、それによって外向的な情熱から内向的な夢想性までの幅の広い表現を生み出している。構成面でも、第1楽章第1主題を終楽章の最後で回帰させる循環手法を用いるなど全体の統一が考慮されている。
 第1楽章(アレグロ・ブリランテ)は、情熱的な第1主題とロマン的な第2主題によって変化に富んだ展開を繰り広げるソナタ形式。第2楽章(イン・モード・ドゥナ・マルチア、ウン・ポーコ・ラルガメンテ)は葬送行進曲風の主部と2つの対照的なエピソードが交替する。第3楽章(スケルツォ、モルト・ヴィヴァーチェ)は音階を上下する急速なスケルツォで、2つのトリオを挟む。第4楽章(アレグロ・マ・ノン・トロッポ)は情熱に満ちたソナタ形式のフィナーレ。そのコーダは長大で、新しい主題、第1主題によるフガート、さらに第1楽章第1主題も導入しての2重フガートによって圧倒的な頂点を作り上げる。

解説:寺西基之

※曲目、演奏順、演奏者等は変更になる可能性がございますのでご了承ください。



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