【日時】 2021年5月23日(日) 開場14:30 開演15:00 終演17:00(予定)
【会場】 別府市 /しいきアルゲリッチハウス・サロン
【出演】 三浦謙司(ピアノ)



F.シューベルト(1797-1828)
ピアノ・ソナタ第14番 イ短調 D 784 op.143

F.Schubert
Piano Sonata No.14 in a minor D. 784 op.143
1. アレグロ・ジュスト Allegro giusto
2. アンダンテ Andante
3. アレグロ・ヴィヴァーチェ Allegro vivace

生涯にわたってウィーンを本拠に活動したフランツ・シューベルト(1797−1828)は未完のものを含めて20曲以上のピアノ・ソナタを手掛けた、それらは、一応は古典的な形式に則りながらも、ロマン的な叙情表現に重きを置いている点で、古典派とは異なる新しいソナタのあり方を志向している。初期の様々な試行錯誤の後、そうした彼らしい独自のソナタへの道を開いた重要な作品が、1823年に完成されたこのイ短調ソナタD.784である。内面の苦悩と微妙な情感を広がりある構成のうちに語り進めていくようなそのスタイルは、シューベルトの中期の始まりを画するとともに、晩年のソナタの孤高性を先取りするような奥深さすら示しているといえるだろう。
第1楽章(アレグロ・ジュスト)はユニゾンの寂しげな、しかし画然とした印象的な主題に始まるソナタ形式楽章で、コラール風の第2主題とともに、叙情的かつダイナミックな発展をみせる。第2楽章(アンダンテ)は深いロマン的な情感に満たされた緩徐楽章で、憧れと愁いが交錯する。第3楽章(アレグロ・ヴィヴァーチェ)は、流れるような3連音の上行音階に始まる主要主題とリート風の副主題とを持つロンド・ソナタ形式のフィナーレである。



F.ショパン(1810-49)
即興曲 第1番 変イ長調 op.29
即興曲 第2番 嬰ヘ長調 op.36
即興曲 第3番 変ト長調 op.51
幻想即興曲(遺作) 嬰ハ短調 op.66

F.Chopin
Impromptu No.1 in A-flat major op.29
Impromptu No.2 in F-sharp major op.36
Impromptu No.3 in G-flat major op.51
Fantasie-Impromptu in c-sharp minor op.66

ポーランドに生まれ、後半生はフランスで過ごしたフレデリク・ショパン(1810−49)は即興曲と題した曲を4曲残している。いずれもその題に相応しい自由な感興を歌い上げた曲だが、構成は論理的に考えられ、創意工夫を随所に窺わせている名品だ。
第1番変イ長調op.29は1837年、マリア・ヴォジニスカという女性との婚約が破棄されたことで落ち込んでいた頃の作品ながら、穏やかさと明るい軽妙さに満ちている。
第2番嬰ヘ長調op.36は1839年、マジョルカ島で健康を害したショパンがノアンにある恋人ジョルジュ・サンドの家で健康を取り戻した時期の所産で、心気一転した当時の心境を示すかのように詩的で幻想的な深い内容を持つ。行進曲風の勇壮な中間部も印象的だ。
第3番変ト長調op.51は1842年の作で、豊かな陰影と優雅な美しさを示した曲。主部は微妙な和声の綾が美しく、変ホ短調に転じる中間部では低音に力強い主題が歌われる。
「幻想即興曲」として知られる嬰ハ短調op.66はショパンの死後に友人のファンタナによって出版されたために第4番ともいわれるが、作曲は4曲中最も早く1834年頃になされている(1835年に改訂)。主部では右手と左手のリズムの違いのうちに幻想的な気分が醸し出され、中間部では叙情に満ちた旋律が歌われる。



C.フランク(1822-90)
前奏曲、フーガと変奏曲 op.18

C.Franck
Prelude,fugue and variation op.18

ベルギーに生まれながらもパリを中心に活動し、サン=サーンスやフォーレらとともにフランス音楽の発展に大きな役割を果たしたセザール・フランク(1822−90)は、とりわけフランスの器楽振興に大きく寄与した。和声面をはじめとする語法の点ではロマン派風の性格を示した彼だが、ピアノ作品として有名な「前奏曲、コラールとフーガ」や「前奏曲、アリアとフィナーレ」などに窺われるように、形式構成の面ではバロックや古典に通じる面も示している。それはひとつには、彼がオルガン奏者として活躍したことにも関わっていよう。
本日演奏される「前奏曲、フーガと変奏曲」もオルガンのための作品として書かれたものである。前奏曲部分は、当時彼がオルガニストを務めていた聖クロチルド教会にあった名オルガン制作者カヴァイエ・コルのオルガンのクラリネット・レジスターのために書かれたもので、穏やかな運びのうちに哀愁を湛えたロマン的な旋律が歌われる。力感に満ちた間奏部分を挟んでフーガ部分に入り、バロック風の厳粛なフーガが展開する。そしてアルペッジョの導入の後、前奏曲の旋律を主題とした変奏によって作品は締めくくられる。ハロルド・バウアーによる編曲をはじめとするピアノ版でも演奏されている。



F.リスト(1811-86)
ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178/R.21
F.Liszt
Piano Sonata in b minor S.178/R.21

フランツ・リスト(1811−86)はピアノのヴィルトゥオーゾとして一世を風靡するとともに、作曲家としても様々な技巧を窮めた数多くの華やかな名技的なピアノ作品を残した。しかしそうした名技性は、あくまで彼の一面に過ぎない。彼は何よりも当時のヨーロッパの新しい芸術思潮に見合う革新的な音楽を真剣に追求した音楽家だった。時代精神に対する鋭い思索の上に立ちつつ、標題音楽のあり方や、和声や形式原理の面での新しい語法を求めた彼の斬新さが、19世紀後半以降の音楽の展開に与えた影響の大きさは測り知れない。
1852年から翌年にかけて作曲されたロ短調ソナタも、独自の語法による大規模な楽曲を求めていた中期の作だけに、全く新しいソナタのあり方を試みた革新的な作品だ。すなわち、ソナタ形式を応用した大規模な単一楽章で全体を構成しつつも、そこにソナタ本来の多楽章的な特質も重ね合わせ、さらに全曲の根本的な形式原理として諸主題を変容させながら循環させるという独自の方法が用いられているのである。曲は、こうした論理をもとに、起伏に富んだ劇的な展開で推し進められていく。リストらしいヴィルトゥオーゾ性とも相俟って、19世紀に作られたピアノ・ソナタの中でも最も斬新な革新性を持つ傑作といえるだろう。

解説:寺西基之

※曲目、演奏順、演奏者等は変更になる可能性がございますのでご了承ください。



公益財団法人アルゲリッチ芸術振興財団
874-0903 大分県別府市野口原3030-1 しいきアルゲリッチハウス
TEL:0977-27-2299 FAX:0977-27-2301