【日時】 2021年5月22日(土) 開場13:45 開演14:30 終演17:00(予定)
【会場】 大分市 / iichiko総合文化センター・iichikoグランシアタ
【出演】 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)、伊藤京子(ピアノ)、小菅優(ピアノ)、
清水高師(ヴァイオリン)、豊嶋泰嗣(ヴァイオリン)、
栗原壱成(ヴィオラ)、富岡廉太郎(チェロ)



W.A.モーツァルト(1756-91)
ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 第1番 ト長調 K.423より 第1楽章 アレグロ

W.A. Mozart
1st movement from Duo for Violin and Viola in G major K.423 Allegro

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756−91)は前半生に、故郷ザルツブルクの大司教に宮廷音楽家として仕えていた。しかし自由な活動を認めない大司教と1781年に激しく衝突し、ザルツブルクを捨ててウィーンに定住、ここで新たな生活を切り拓いていくことになる。
この後半生のウィーン時代に彼は一度だけザルツブルクに里帰りした。この折にモーツァルトはヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲を2曲作曲している。かつて同僚だったザルツブルクの宮廷音楽家ミヒャエル・ハイドン(大作曲家ヨーゼフ・ハイドンの弟)が大司教の命で6曲の二重奏曲を作曲中、あと2曲というところで病気にかかって書けなくなり、モーツァルトがその残り2曲を彼のために代作したのだった。ミヒャエル・ハイドンはこのモーツァルトの友情に対して終生感謝の思いを抱いていたといわれている。2曲ともに、2つの楽器が緻密なアンサンブルを繰り広げていく名品で、本日演奏されるのはそのうちの第1番ト長調の第1楽章(アレグロ)。勢いよく始まる第1主題と優美な第2主題を持ち、展開部の後半では緊張感に満ちたカノンが繰り広げられ、再現部でも第2主題の再現の後にカノンが盛り上がりを作る。
【演奏者】 
 清水高師
(ヴァイオリン)、栗原壱成(ヴィオラ)



A.ドヴォルザーク(1841-1904)
ピアノ五重奏曲 イ長調 op.81 B.155

A.Dvořák
Piano Quintet in A major op. 81 B.155
1. アレグロ・マ・ノン・タント Allegro ma non tanto
2. ドゥムカ、アンダンテ・コン・モート Dumka: Andante con moto
3. スケルツォ(フリアント)、モルト・ヴィヴァーチェ Scherzo(Furiant): Molto vivace
4. フィナーレ、アレグロ Finale: Allegro

ボヘミア国民楽派を代表するアントニン・ドヴォルザーク(1841−1904)は、伝統的なスタイルのうちに民族色を織り込むことで民族主義的な作風を追求していった。そうした彼にとって交響曲や室内楽曲などの伝統ジャンルは特に重要なもので、とりわけ室内楽作品を彼は多数作曲している。本日のピアノ五重奏曲はそうした彼の多数の室内楽曲の中の代表作のひとつ。作曲は1887年にプラハ南のヴィソカー村でなされた。伝統的な4楽章構成のうちにもボヘミア的な旋律、スラヴの哀歌であるドゥムカ(第2楽章)、農民舞曲フリアント(第3楽章)など、様々な民族的要素が織り込まれており、全体の堅実な書法と相俟って、円熟期の所産に相応しい名作となっている。
第1楽章(アレグロ・マ・ノン・タント)はソナタ形式をとり、伸びやかな叙情と激しい民族的な情熱が入り交じる。第2楽章(アンダンテ・コン・モート)はドゥムカによる暗い情感に満ちた緩徐楽章で、ラプソディ風の変化に満ちた発展を示す。第3楽章(モルト・ヴィヴァーチェ)は舞曲フリアントによる生き生きしたスケルツォ。第4楽章(アレグロ)も農民舞曲風の主題を中心とした民族色豊かなソナタ形式のフィナーレで、明朗な発展を繰り広げていく。
【演奏者】
 小菅優(ピアノ)、
 豊嶋泰嗣(第1ヴァイオリン)、清水高師(第2ヴァイオリン)、
 栗原壱成(ヴィオラ)、富岡廉太郎(チェロ)



D.ショスタコーヴィチ(1906-75)
2台のピアノのためのコンチェルティーノ イ短調 op.94

D.Shostakovich
Concertino for two pianos in a minor op.94

旧ソヴィエト連邦で活動したドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906−75)は、社会主義リアリズム(ソ連共産党が打ち出した芸術方針)を掲げる国家(ソヴィエト共産党)の圧力と自らの芸術的信念の狭間で苦悩しつつ創作を行なった作曲家だった。生涯のあいだには何度か当局から作品を厳しく弾劾され、困難な状況の中での作曲活動を余儀なくされたが、一見当局の方針に沿ったスタイルの中にも、反体制的メッセージを暗号のようにしのばせたり、意味ありげなパロディックな書法を用いたりなど、彼の作品の多くは弾圧の中で生きる芸術家のしたたかさを窺わせるものとなっている。
もっとも1954年に2台ピアノのために書かれたこの単一楽章のコンチェルティーノ(小協奏曲)は、当時モスクワ音楽院でピアノを勉強していた愛息マキシム(後年に指揮者として活動)のために作曲されたものだけに、全体としてはあくまで明るく楽しい気分を基調とする作品だ。しかしながらやはりその中にも、緩やかな導入部における重苦しい雰囲気、軽妙な主部の持つどこかアイロニカルな性格、中間および終盤に戻ってくる重苦しい空気など、多層的な特質が窺える点がショスタコーヴィチらしいといえるだろう。
【演奏者】 
 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)、伊藤京子(ピアノ)



J.S.バッハ(1685-1750)
パルティータ第2番 ハ短調 BWV826

J.S.Bach
Partita No.2 in c minor BWV826
1. シンフォニア Sinfonia
2. アルマンド Allemande
3. クーラント Courante
4. サラバンド Sarabande
5. ロンドー Rondeaux
6. カプリッチョ Capriccio

ヨハン・セバスティアン・.バッハ(1685−1750)は後半生のライプツィヒ時代にチェンバロ(本日はピアノでの演奏)のための6つの「パルティータ」を作曲した。パルティータとはバロック時代の舞曲組曲の一種で、バッハはすでに「イギリス組曲」「フランス組曲」といったチェンバロ用の組曲で舞曲の様式化を追求していたが、「パルティータ」ではその方向をさらに掘り下げ、バロック様式の総合化をめざした彼ならではの高い芸術性を示す作品となっている。
本日の第2番は6曲からなり、序曲にあたる堂々たる“シンフォニア”で始まる。これは、フランス序曲風の付点リズムによる荘重な部分、アンダンテの歌謡的な部分、速いフーガ部分という3つの部分からなる。続く“アルマンド”は声部の絡みが美しい。“クーラント”は前進的な運びが対位法的な書法と結び付いている。“サラバンド”もやはり対位法的な音の綾が本来の舞曲としてのサラバンドをはるかに超えた趣を生み出している。続く“ロンドー”はリズミックな主要主題がエピソードと交替しながら何度か現れる。最後の“カプリッチョ”はフーガ風に始まる活気に満ちた曲。その後半部分の冒頭は主題の転回形(音の上下の動きを逆さにすること)で始まる。
【演奏者】 
 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)



P. ハイドリッヒ(1935-)
ハッピー・バースデー変奏曲 より

P. Heidrich
Happy Birthday Variations

誕生日を祝う歌として知られる「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」(原曲はアメリカのM.J.ヒルとP.S.ヒルの姉妹が作曲した「グッド・モーニング・トゥー・オール」)。世界中で親しまれているこの旋律を用いて、ベンティエン四重奏団の第2ヴァイオリン奏者ペーター・ハイドリッヒ(1935−)が同じ四重奏団のチェロ奏者の50歳の誕生日を祝うべく作ったのが、この「ハッピー・バースデー変奏曲」である。
四重奏仲間へのプレゼントだけに、自分たちのレパートリである大作曲家の諸作品、すなわちハイドンの弦楽四重奏曲「皇帝」、モーツァルトの弦楽四重奏曲「不協和音」、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲「ラズモフスキー第2番」、ブラームスの弦楽六重奏曲第1番、シューマンの弦楽四重奏曲第3番、ドヴォルザークの弦楽四重奏曲「アメリカ」、さらにワーグナーやレーガーの曲などの一節を用い、「ハッピー・バースデー」の旋律と結び付けて変奏とした一種のパロディ作品で、その後ポルカやワルツ、さらにはラグタイム、タンゴ、ジプシー音楽その他様々な大衆音楽の様式による変奏なども加えられて拡大版が作られていった。本日はその中から何曲かが取り上げられる。
【演奏者】 
 清水高師(第1ヴァイオリン)、豊嶋泰嗣(第2ヴァイオリン)、
 栗原壱成(ヴィオラ)、富岡廉太郎(チェロ)


解説:寺西基之

※曲目、演奏順、演奏者等は変更になる可能性がございますのでご了承ください。



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