【日時】 2021年5月14日(金) 開場18:15 開演19:00  終演21:00(予定)
【会場】 東京都 / 東京オペラシティ コンサートホール
【出演】 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)、ミッシャ・マイスキー(チェロ)

【日時】 2021年5月16日(日) 開場17:15 開演18:00 終演20:00(予定)
【会場】 別府市 / ビーコンプラザ・フィルハーモニアホール
【出演】 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)、ミッシャ・マイスキー(チェロ)



L.v.ベートーヴェン(1770-1827)
モーツァルトの『魔笛』の「恋を知る殿方には」の主題による7つの変奏曲 変ホ長調 WoO 46

L.v.Beethoven
Seven Variations on "Bei Männern welche Liebe fühlen" from Mozart's "Die Zauberflöte" in E-flat Major WoO 46

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770−1827)のチェロとピアノのための二重奏作品としては5曲のソナタがとりわけ有名だが、そのほかに変奏曲も3曲残しており、そのうちの2曲はモーツァルトの最晩年のオペラ『魔笛』から主題をとっている。その1曲である本日の変奏曲は、『魔笛』の第1幕で王女パミーナと鳥刺しのパパゲーノによって歌われる二重唱「恋を知る殿方には」を主題としたもので、初期から中期への過渡期にあたる1801年に作曲されたと推定されている。いわゆる性格変奏(主題を単に装飾的に変奏するのでなく、主題の部分的特徴だけを残して変奏ごとに新たな性格を作り出す手法)によった変奏技法の面でも、チェロとピアノの二重奏的な絡み合いといった書法の点でも、きわめて充実した内容を示す作品だ。
主題(アンダンテ)は対旋律を伴って提示され、原曲の旋律をピアノとチェロが交代しながら受け渡す。これに7つの変奏が続けられるが、特にその後半は変化に富み、第4変奏で短調に転じてそれまでの気分をがらりと変え、第5変奏でテンポを上げた後、一転してアダージョの第6変奏を挟んで、今度はアレグロ・マ・ノン・トロッポの第7変奏が続き、最後は新しい主題が導入される大規模なコーダによって華やかに締め括られる。



C.フランク(1882-1890)
ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調(チェロとピアノのための編曲版)

C.Franck
Sonata for violin and piano in A major(arranged for cello and piano)
1. アレグレット・ベン・モデラート Allegretto ben moderato
2. アレグロ Allegro
3. レチタティーヴォ−ファンアジア Recitativo−Fantasia
4. アレグレット・ポーコ・モッソ Allegretto poco mosso

ベルギー出身ながらフランスで活動したセザール・フランク(1822−90)は、オリジナルのチェロ・ソナタは1曲も残していない。本日演奏されるのは1886年に、ベルギーの名ヴァイオリン奏者ウジェーヌ・イザイのためにヴァイオリン・ソナタとして書かれた名作である。地味で渋い外観のうちに激しい内面感情を表現したフランクらしいソナタで、弦のカンタービレと表現性を巧みに生かしているゆえに、チェロでも盛んに取り上げられるようになった。全体は4楽章構成をとり、全曲に共通する主題や動機を用いる循環手法によって、4つの楽章の統一が効果的に図られている。
第1楽章(アレグレット・ベン・モデラート)は内面的叙情に満ちた楽章で、展開部のないソナタ形式をとる。その第1主題は全曲の最も重要な循環主題となる。第2楽章(アレグロ)は激しい情熱に満ちた劇的な楽章で、緻密なソナタ形式によっている。第3楽章(レチタティーヴォ−ファンタジア)は自由な構成をとる神秘的かつ内省的な緩徐楽章。第4楽章(アレグレット・ポーコ・モッソ)は楽想の変化に富んだロンド形式のフィナーレ。循環主題をはじめ全曲の主要な主題や動機を活用しながら多彩な展開を示し、最後は華やかなコーダが全曲を締め括る。



R.シューマン(1810-56)
アダージョとアレグロ 変イ長調 op.70

R.Schumann
Adagio and Allegro in A-flat major op.70

ドイツ・ロマン主義を代表する作曲家ローベルト・シューマン(1810−56)は、初期には感情の起伏の激しい作風を示したが、後期になるにつれて、内向的・内省的な傾向を強めていく。そのことは後期の1849年に、ピアノと様々の楽器の組み合わせで書かれた一連の二重奏の小品にもはっきりと現れている。
この「アダージョとアレグロ」もその1849年に作曲された二重奏小品のひとつ。もともとホルンとピアノのために書かれた作品で、当時新しく用いられるようになったヴァルヴ・ホルンの特性を生かすように作曲されている。シューマン自身、ホルンの代わりにチェロやヴァイオリンで演奏してもよいとしており、ヴィオラ、クラリネット、オーボエなどで演奏される機会も多い。本日はチェロによって演奏される。曲は、ふくよかな叙情的主題が表情豊かに歌い継がれるアダージョ部分(ドイツ語で“遅く、内面的な情感をもって”と表記されている)の後、いかにもホルンのファンファーレに相応しい主題を持つ情熱的なアレグロ部分(“急いで燃え立つように”)が華やかに発展する。このアレグロ部分には途中落ち着いた思索的な中間部が挟まれるが、この部分の主題は先のアダージョ主題と関連しており、そうした統一的な構成にシューマンらしい配慮が窺えよう。



D.ショスタコーヴィチ(1906-75)
チェロとピアノのためのソナタ ニ短調 op.40

D.Shostakovich
Sonata for cello and piano in d minor op.40
1. アレグロ・ノン・トロッポ Allegro non troppo
2. アレグロ Allegro
3. ラルゴ Largo
4. アレグロ Allegro

ドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906−75)は旧ソヴィエトで活動した作曲家で、国家当局との軋轢の中でいくつもの傑作を生み出したことで知られるが、1934年に書かれたこのチェロ・ソナタは、まだ当局から公然と批判を受ける以前の初期の作品である。初期のショスタコーヴィチはモダニズム的な前衛性を追求していたが、このソナタは明快な古典的形式と叙情的なロマン性を巧みに調和させた伝統的なスタイルをとっている。しかしその中にも鋭いアイロニーを潜ませている点など、ショスタコーヴィチらしい個性もはっきりと打ち出されている。
第1楽章(アレグロ・ノン・トロッポ)は叙情的な性格を持つ楽章で、自由なソナタ形式をとっている。再現部は第2主題から始まり、最後はラルゴの葬送行進曲となる。第2楽章(アレグロ)は諧謔的なスケルツォ風のワルツ楽章で、中間部におけるチェロのハーモニクス(弦上の1点を指で軽く触れて倍音を響かせる特殊奏法)によるグリッサンド(指を滑らせる奏法)の響きが印象的。第3楽章(ラルゴ)は深い瞑想的な主題による美しい緩徐楽章。中間部分では、ピアノが鐘の音を模倣する。第4楽章(アレグロ)はおどけたような主要主題を持つ自由なロンドのフィナーレ。ここにも諧謔的な精神が窺われる。


解説:寺西基之

※曲目、演奏順、演奏者等は変更になる可能性がございますのでご了承ください。



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