【日時】 2021年5月9日(日) 開場14:30 開演15:00 終演17:00(予定)
【会場】 別府市 /しいきアルゲリッチハウス・サロン
【出演】 亀井聖矢(ピアノ)



D.スカルラッティ(1685-1757)
ソナタ ホ長調 K.20-L.375/ソナタ ロ短調 K.87-L.33/ソナタ ニ短調 K.141-L.422

D.Scarlatti
Sonata in E major K.20-L.375/Sonata in b minor K.87-L.33/Sonata in d minor K.141-L.422

ドメニコ・スカルラッティ(1685−1757)はバッハやヘンデルと同時代に生きたイタリア出身のバロック時代の作曲家である。高名なオペラ作曲家だった父アレッサンドロから教育を受け、イタリア各地でオペラ作曲家として活躍した後、1702年にポルトガルの宮廷楽長としてリスボンに赴き、王女マリア・バルバラのチェンバロ教師となった。さらに1729年に王女がスペイン王子と結婚すると、王女とともにマドリードに移住、終生ここで活動した。
彼の名は何より550曲以上にのぼるチェンバロ・ソナタで知られ、その多くは王女のために書かれた。そのほとんどは各々反復記号を持つ前後2部分から成る短い単一楽章構成をとるが、そうした形式の中に盛り込まれた創意は実に多様で、ロココ風の作風のうちに1曲1曲が個性的な性格を示している。また鍵盤楽器の種々の演奏技法や書法が追求されている点も注目すべきで、鍵盤音楽の歴史における重要な作品として、ピアノでも盛んに演奏されている。本日は、南国的な明るさのうちにも微妙な表情を湛えたホ長調K.20(L.375)、ポリフォニックな音の綾が厳粛な気分を生み出すロ短調K.87(L.33)、ギター風の同音連打と鋭い和音に始まる劇的なニ短調K.141(L.422)の3曲が演奏される。



F.ショパン(1810-49)
ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 op.58

F.Chopin
Piano Sonata No.3 in b minor op.58
1. アレグロ・マエストーソ Allegro maestoso
2. スケルツォ、モルト・ヴィヴァーチェ Scherzo: Molto vivace
3. ラルゴ Largo
4. フィナーレ、プレスト・ノン・タント Finale: Presto non tanto

フレデリック・ショパン(1810−49)が1844年夏に生み出したこのソナタは、彼の後期の代表作のひとつである。独自の構成論理とロマン的な感情表現を融合させた中期のソナタ第2番のスタイルを引き継ぎながらも、一層確固とした構成感と有機的な統一性が後期の円熟した筆遣いのうちに示されている。スケールの大きさと構造の緻密さの点で、ショパンの全作品中でも際立った傑作であるといってよいだろう。この年ショパンは自らの健康の悪化とともに、5月には母国ポーランドにいた父の訃報を聞いて落ち込むなど、肉体と精神の両面で試練に見舞われたが、そうした経験が逆に彼の創作意欲を掻き立てたのかもしれない。
第1楽章(アレグロ・マエストーソ)は決然とした主題に始まり、緊張感に満ちた展開を繰り広げるソナタ形式楽章。第2楽章(スケルツォ、モルト・ヴィヴァーチェ)は軽やかな動きによるスケルツォ。コラール風のトリオが対照を作り出す。第3楽章(ラルゴ)はロマン的な深い情感を湛えたノクターン風の緩徐楽章。中間部のデリケートな美しさもショパンらしい。第4楽章(プレスト・ノン・タント)は、2つの主題を交互に配した構成のうちに高揚を示していく情熱的なフィナーレである。



A.ベルク(1885-1935)
ピアノ・ソナタ ロ短調 op.1

A. Berg
Piano sonata in b minor op.1

アルバン・ベルク(1885−1935)は師のシェーンベルクやウェーベルンとともに“新ウィーン楽派”の作曲家として、表現主義的な音楽から無調音楽の技法を発展させたことで知られる。しかし3人のうちでベルクは生来ロマン的な資質を持っていただけに、その音楽の根底には無調的な冷たさとは異なる叙情的な性格も窺わせている。
1907年から翌年にかけて書かれたこのピアノ・ソナタは、彼の美質を示す初期の代表作。シェーンベルクのもとでの修業時代の最後に書かれた卒業作品的な意味を持つソナタで、自らのスタイルを確立した自信作という意味合いもあったのだろう、これに作品1の番号を付して自費出版した。当初は多楽章のソナタとして構想されたようだが、ソナタ形式による第1楽章を書き上げたところでそれだけで完結した単一楽章の作品とされたのだった。ロ短調をとってはいるものの、師のシェーンベルクらとともに探求していた無調的な和声法が全体に浸透しており、第1主題の中の動機を重要な要素としながら、複雑な音の動きの絡みが生み出す斬新な響きによって緊張感に満ちた展開が織りなされていく。しかしその中にも陶酔的な甘美さや叙情的な表情を垣間見せているところがベルクらしい。



S.ラフマニノフ(1873-1943)
ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調op.36(1931年版)

S.Rachmaninov
Piano Sonata No.2 in b-flat minor op36(1931version)
1. アレグロ・アジタート Allegro agitato
2. レント Lento
3. アレグロ・モルト Allegro molto

ロシア出身の作曲家セルゲイ・ラフマニノフ(1873−1943)は自身が卓越したピアノの名手だっただけに、数多くのピアノ曲を残した。それらは、ロシア風の叙情とヴィルトゥオーゾ的な技巧性とを結び付けたロマン的な書法にその特質がある。作曲家としてすでに円熟期にあった1913年に書かれたソナタ第2番もそうした彼の個性がよく示された作品で、ロシア的な暗い情感、起伏の激しい感情性、ロマンティックな甘美さが、ピアニスティックな書法のうちに打ち出された名作である。しかしラフマニノフは後になってこのソナタがあまりに長大で複雑すぎると感じるようになり、亡命後の1931年に大幅な改訂を行ない、原曲の名技的な部分をかなり思い切って削減するとともに、錯綜した音の綾を簡素化して、より明快な改訂版を作り上げた。初版も改訂版もそれぞれのよさがあるが、本日は改訂版によって演奏されるという。
全体は3つの楽章でなる。第1楽章(アレグロ・アジタート)は、起伏の激しい劇的な展開を示すソナタ形式。第2楽章(レント)はいかにもラフマニノフらしい甘美な叙情性に満ちた緩徐楽章。そのまま続けられる第3楽章(アレグロ・モルト)はラプソディックな発展を示す変化溢れるフィナーレである。

解説:寺西基之

※曲目、演奏順、演奏者等は変更になる可能性がございますのでご了承ください。



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