マルタ・アルゲリッチ(総監督・ピアノ)
・2016年5月7日 オーケストラ・コンサート後

 私は去年共演して以来、この広島交響楽団が大好きなんです。非常に活き活きとしたオーケストラだと思います。ショスタコーヴィチのこの曲は、弦楽部が難しい難曲でしたが、素晴らしい準備をしてきてくれました。このオーケストラを招待したかったのは、去年の広島と東京での共演で非常に深い印象を受けていたからです。私は平和記念式典にも参列しました。特別な街の、特別なオーケストラだと思います。歴史的な意味からだけではなく、平和と音楽について彼らが取り組んでいる活動が素晴らしいからです。7月には小林愛実さんとシンフォニア・ヴァルソヴィアというポーランドのオーケストラと共演のコンサートをするそうですね。興味深い組み合わせです。このオーケストラだけではなく、広島県知事も世界平和のために、音楽に限らず様々な取り組みをされています。
広島に行ったのは去年が最初ではなく、それまでにリサイタルで何度か訪れたことがあります。ドゥダメルとシモン・ボリバル・オーケストラと訪れたこともあります。その時はカプソン兄弟とベートーヴェンの三重協奏曲を演奏しました。そういった過去の広島公演の中でも、去年は70周年ということで、非常に特別なものでした。
 別府の聴衆の皆さんも、ショスタコーヴィチだけではなく、ベートーヴェンに関しても、このオーケストラの演奏を気に入られたのではないでしょうか。私は4日前に来日したばかりで、ほとんど眠れなかったこともあって調子はあまり良くありませんでした。でもショスタコーヴィチ作品は緊張度の高い曲ですけれど、ユーモアがあって演奏には入りやすかったですね。これがラフマニノフの協奏曲だったとしたら難しかったかもしれませんが。とにかく練習の時からオーケストラは素晴らしい演奏でした。

・2016年5月14日 室内楽コンサート後

 非常に楽しく、快く演奏することができましたね。もし、もっとアンコールを用意していたら、まだ演奏できたと思いますが、これ以上は準備していなかったものですから、残念です。聴衆も気に入ってくれたように感じました。もちろん、この共演からも特別なものを感じました。レーピンさんとは、以前ハイドンのトリオを演奏したことがありますけど、聴衆の前で共演したのはこれが初めてじゃないでしょうか。クロイツェルを録音したのはスタジオでしたから。
 リハーサルの過程で、このプロコフィエフの曲について知らなかったことを彼が教えてくれました。あまり演奏したことのない曲だったので、彼のアイデアが新鮮で、興味深かったです。プロコフィエフのこの曲はおとぎ話のような雰囲気があるのですが、そういうところはシューマンと共通するものがあるように感じました。シューマンの音楽にも、おとぎ話のような雰囲気があります。プロコフィエフと並んで、私の好きな作曲家たちです。二人は何か特別な感じがします。もちろんベートーヴェンも大好きですよ。プロコフィエフは日本にも滞在した経験がありますね。ピアノ協奏曲第3番の第3楽章は日本で書かれたはずです。
 レーピンさんと前回共演したのは確か5年ほど前だったと思いますが、共演するたびに違った感じになりますので、非常に楽しいですね。今日は、コミュニケーションも非常にうまくいったと思います。とても自然に自発的にやれた感じがします。

・2016年5月23日 スペシャルコンサート後

 今日はプログラムの趣向からして。非常に特別なコンサートだったと思います。演奏に関して言いますと、モーツァルトは素敵だったと思います。京子が素晴らしい演奏をしてくれました。次の準備があったので、ラベルのデュオは残念ながら聴くことができませんでした。ラヴェルの「夜のガスパール」に関しては、緊張していましたので、正直なところどうだったのか、自分でもよくわかりません。何しろ、この曲は40年ぶりの演奏だったんですよ! 想像できますか? その上、詩の朗読と一緒にやるというのも初めての経験でした。娘による詩の朗読との共演というのは、人生初の経験でした。久しぶりの曲に初めての組み合わせで、本当に緊張しましたし、うまくいくのか心配でしたが、私個人は楽しめたと思います。



アニー・デュトワ(朗読)
 ユニークな趣向の演奏会でしたが、パフォーマンスは良かったと思います。実を言うと、この詩は非常に難しくて緊張していました。覚えるのも大変でしたし、いかに自然な感じで読めるかというのが難しかったところですね。言葉遣いが古めかしいというか、不必要にも見える細かな部分がたくさんある詩です。今回はベルトランの詩を朗読したわけですが、ベルトラン本人はこの詩を気に入らず出版するまいと考えていたそうです。ところが彼の死後、原稿が発見されて出版されたという経緯があって、それを読んだラヴェルがこの詩を選んで作曲したのです。
 平野さんとはスカイプを通じて対話しながら準備を進めてきました。去年の広島の企画で共演した経験がありましたから、どういう風に詩にアプローチしていくかを話しながら決めていきました。その後、彼が翻訳をしたのですが、内容が複雑だったので、ステージ上の演出を誰かに依頼しようということになりました。
 私は、母と共演するということで実は緊張していました。母はとにかく素晴らしいピアニストですから、「私も同じくらい上手にやらないと大変だ!」と思っていました。一緒にやることができて非常に楽しかったです。去年は、原爆70周年を記念するイベントで、母と一緒に広島と東京に行きました。母と同じ曲で共演したというわけではありませんが、同じステージには立っていたわけです。今回のプログラムはお互いがより融合した感じでしたね。もちろん、私は母の演奏がいつも大好きです。
 別府の音楽祭に参加するのは今回が2回目になります。別府での経験はいつも素敵です。皆さんとてもよくしてくださいますし、家族に会いに来るような感じがします。伊藤京子さんは、私がまだ本当に小さな時から知っています。それに別府には、もうずいぶん昔、まだ音楽祭が始まったばかりの頃に見に来たことがあります。ですから、それを含めると別府の音楽祭を体験するのは今回で3回目ですね。
 これからも別府で何かをする機会があることを願っています。音楽作品を今回のような形で演奏するのはとても興味深い試みだと思います。特に、音楽作品が文学からインスピレーションを受けている場合はそうですね。その関係を知らない人も多いですから。
 ハウスで演奏するのは、ある意味プレッシャーでした。人数は大きなホールよりもずっと少ないですが、聴衆はすぐそこにいるわけです。私は会場内を動き回って演じなければならなかったので、お客さんの足を踏んでしまわないようにすごく気を使いました。でも聴衆の皆さんも素晴らしくて、良い演奏会になったと思います。



川本嘉子(ヴィオラ)
 別府も震災に見舞われ心配しておりましたが、建物などの被害が少なかったので安堵しました。
地震の恐怖による緊張した心が音楽祭の演奏会を聴いて和らいだ、と演奏者としてとても励みになる声も届いております。風評被害が心配ですが、街中で外人の個人旅行を楽しむ姿をたくさん目にしたので驚きました。
 しいきハウスも2年目に入り、益々充実している様子を嬉しく思っております。
10月10日に伺う時が楽しみです。
今年の音楽祭では、監督のコンチェルト、デュオで本当に感動しました。
心が無垢になるような感覚になり、昔、子供の時に楽しく遊んでいた時を体感したような気がしました。リハーサル、本番を通して監督の音楽を拝聴出来たので、心と身体に音楽でしか味わえない栄養をタップリといただきました。演奏家 冥利に尽きます。
 両演奏会も、監督が出演しない曲をお客様に「飽きないで聴いていただく」ことが、今回、これが私の最大のテーマでした。今の自分の能力を最大限に拡げる努力をしたつもりではありますが、、今、それが出来ていなかったとしても、それを目標にする事によって、道が出来る、と信じて強い気持ちで臨みましたが、いかがでしたでしょうか。
 伊藤先生の繊細なホスピタリティと監督の大胆不敵な音楽、このバランスで成り立っているこの音楽祭は世界でも稀有な存在だと確信しております。
益々の発展を心から願って止みません。



蔵川瑠美(広島交響楽団/ヴァイオリン)
 この度は、アルゲリッチ音楽祭に参加させていただき、本当にありがとうございました。全国から音楽祭を楽しみに集まられたお客様の熱気に包まれ、演奏させて頂いた私達も大変刺激になりました。
 アルゲリッチさんは、演奏家として、そして人間としてもとても尊敬出来る方だと、改めて感じました。
 昨年ご一緒させて頂いた時もそうでしたが、リハーサルのときはいつも、「私はこう思うけれど、あなたはどう?」と語りかけてくださいます。
 オーケストラは、時には100人を超えるメンバーで演奏するので、皆が協力しないと1つの曲を作ることができません。それぞれに違う考えを持っていても、それを認め、尊重し合うことが大切です。
 アルゲリッチさんの平和への活動の源には、そのようなお考えがあるのではないかと思います。そしてもしかしたら、世界の平和も、オーケストラで演奏することと似ているのかもしれないと、音楽祭を通して感じました。
素晴らしい機会を与えて頂き、感謝しております。本当にありがとうございました。



小峰航一(紀尾井シンフォニエッタ東京/ヴィオラ)
 昨年に引き続き紀尾井シンフォニエッタのメンバーとして、アルゲリッチ音楽監督のベートーヴェンのピアノ協奏曲二番を共演させていただきました。ピアノという楽器から引き出す最大限の自由さ、音楽に深く没頭している弾き姿、その場で音楽が生まれているとはこう言うことを言うのではと思いました。オーケストラもどんどんアンサンブルが研ぎ澄まされ、まるで大きな室内楽を奏でているようでした。幸せな時間をありがとうございます。
 また震災の痛ましいこの年にこそ来県し、皆さんを大いに励ましたであろうアルゲリッチ音楽監督に改めて尊敬の念を抱きます。

<しいきアルゲリッチハウスの感想>
 去る3月19日にしいきアルゲリッチハウスでリサイタルを開かせていただきました。温かなサロンの雰囲気の中、自分の大好きな曲を集めたプログラムを演奏できてとても幸せでしたが、同時に世界でも類を見ない緊張感を持ったホールに圧倒されたと言うのも正直な感想です。大ピアニストの名前を冠したこのホールで演奏できるのはとても光栄ですが、それだけ責任があるということで、これからそういった緊張感とハウスの持つ温かさが相互作用して様々な名演奏が繰り広げられることだろうと確信しました。また機会があれば演奏したいです!



清水高師(ヴァイオリン)
 震災の後でしたので重い気持ちで大分入りしました。
今年の音楽祭では久し振りにアルゲリッチ総監督のショスタコーヴィチピアノ協奏曲を聴けたことがとても嬉しかったです。コンサートマスターという要職でしたが高関さんの名指揮振りに委ねて、私はアルゲリッチ総監督の世界に引き込まれていました。円熟した存在感を放ついち音いち音が、私に問いかけてきました。心の自由を得るというのはこういう事なのかと考えさせられました。総監督とは北九州でも思い出深い共演があり、良い年になりました。いつもながらスタッフの皆様に感謝しております。



高関健(指揮)
 震災による大変な被害の直後にもかかわらず、アルゲリッチさんが「こういうときだからこそ、開催を!」と表明してくださったことに、心から敬意を表します。その言葉に多くの人たちが救われ、音楽祭がさらに活気あるものになったと感じています。
 昨年に引き続き、しかも今年は2曲。別府で広島交響楽団と共に演奏したショスタコーヴィチの第1協奏曲は、アルゲリッチさんが最も得意とする作品で、ご一緒できることをとても楽しみにしていました。練習では快速テンポに追いつくことに必死でしたが、むしろゆったりした第2楽章をどのように表現するべきか、多くの示唆をいただきました。本番での陰影の濃い演奏を忘れることはできません。第4楽章のアンコールはもっと速くて、でもとても楽しいひと時で会場も大いに盛り上がりましたね。
皇后陛下にご臨席を賜りました東京公演は、紀尾井シンフォニエッタと共にベートーヴェンの第2協奏曲。再演とはいえ、昨年の大分とはまったく異なる展開で、一回限りの演奏にすべてを掛ける尊さを改めて教えてくださいました。第2楽章での弱奏は昨年よりもさらに透徹して、舞台上で再び深く感じ入っていた次第です。
 アルゲリッチさんとの共演はいつも本当に格別の出来事です。素晴らしい機会を頂いたことに深く感謝いたします。



辻本憲一(トランペット)
 単に綺麗だとか美しいとかいう言葉では表せない、強い意志がこもったアルゲリッチさんの音色はピアニストの域を超越していました。演奏会が終わってからも私の中での記憶は、ピアノの音を聴いたというよりも、何か語りかけられていたような感覚が強く残っています。その言葉は淀みがなく飾りのないとても純粋なもので頭で理解する前に身体に入っていく様な感覚でした。一音一音に人生の全てが詰まっている様なアルゲリッチさんの音色に演奏者、聴衆、スタッフ、全員が吸い寄せられていたと思います。



辻本玲(チェロ)
 今回は初めてアルゲリッチ音楽祭に参加させて頂きました。残念ながらアルゲリッチさんとの共演は叶いませんでしたが、レーピンさん、川本嘉子さんと弾かせて頂きました。お二人の大きな音楽に圧倒されながら、充実した時間でした。
 アルゲリッチさんのリハや本番をかじりついて聴かせて頂きましたが、圧倒的なテクニックもテクニックとは感じさせない自然な音楽性、ピアノの常識を越えた美しい音を目の当たりにでき、その場にいられることが幸せでした。この先、再びご一緒させて頂ける機会を夢見て、がんばっていきたいと思います。
 本当にありがとうございました!



沼沢淑音(ピアノ)
 この度は歴史ある、またとても素敵な音楽祭で演奏させて頂き、本当にありがとうございました。
 この音楽祭のことは子供の頃から知っていましたが、まさかこのような機会を頂けるとは思ってもみませんでした。なにより自然に恵まれていて、空港に降りたった時から、コンサートホールまでの脈々と通奏低音のように続く海や新緑、澄んだ空気が音楽的な場所でした。またそのような場所でアルゲリッチさんの本当に素晴らしい演奏を聴くことができ幸せでした。
 しいきアルゲリッチハウスは木の温もりの、とてもよく響くホールで.気持ちよく演奏させて頂きました。
 これから色々な方が演奏し、時という空間に色彩をちりばめ、またホールの木にその音の記憶が浸透してさらに豊かな響きになることでしょう。
 最後に大変お世話になりました関係者の皆さまに感謝を申し上げます。



平野啓一郎(朗読)
 別府アルゲリッチ音楽祭には、一ファンとして以前から足を運んでいましたが、昨年、しいきアルゲリッチハウスに講演者としてご招待いただいたのに続き、今年はマルタ・アルゲリッチさんの40年ぶりとなる『夜のガスパール』の演奏に、アニー・デュトワさんと朗読者として共演させていただくという幸福に恵まれ、生涯、忘れることの出来ない一夜となりました。
 小規模の、非常に親密な空間だけに、その演奏の感動は喩えん方もなく、こんなに素晴らしい音楽体験は、もう一生ないだろうとあとで客席にいた知人と語り合ったものです。
 大分県にも被害を与えた「熊本地震」の直後だっただけに、マルタさんのこの音楽祭への強い思いも、多くの人々に慰めと勇気をもたらしたことと思います。
 この音楽祭のますますの発展を祈念して止みません。



福士マリ子(紀尾井シンフォニエッタ東京/ファゴット)
 去年に引き続き、紀尾井シンフォニエッタの一員としてアルゲリッチさんと共演出来ましたことを心より嬉しく思います。
 曲目は去年と同じくベートーヴェンのコンチェルト第2番でしたが、魂を揺さぶられるような輝かしく鮮烈なアルゲリッチさんの音楽に、今年もたくさんの刺激を頂きました。
 本番では彼女の集中力に思わず緊張しながらも、その素晴らしさを体感することで、音楽のもつ力強さを教えられたように思います。
 この貴重な経験を再び得られたことに大きな喜びを感じています。有難うございました。

<しいきアルゲリッチハウスの感想>
 オープンして間もないサロンで、ファゴットリサイタルの機会を頂き大変光栄に思います。木の温もりが肌に感じられるような素敵なサロンで、響きを楽しみながら演奏することが出来ました。大きなホールとは違ってお客様との距離も近く、親しみを持てるような空間に魅力を感じました。ピアノの音色も素晴らしく、ファゴットの特徴である柔らかな響きもサロンと相まって、心地良さを引き出してくれたのだと思います。コンサートへ足を運んで下さったお客様、温かく迎えて下さったスタッフの皆さまに、この場を借りて心よりお礼申し上げます。



向山佳絵子(チェロ)
「音楽祭&しいきアルゲリッチハウスの感想」
 初めてこの音楽祭に参加させていただきましたが、スタッフの皆さまやお客様のあたたかい雰囲気のなか、楽しく演奏することができました。ありがとうございました。
偉大な芸術家の名前を冠した、長く続いている音楽祭でありながら、ある意味手づくり感あふれるアットホームな印象を受けましたが、それは弾かせていただいた「しいきアルゲリッチハウス」からきているかもしれません。贅沢な空間で客席はゆったり、またステージはフラットなこともあり、より一体感が生まれやすいように思いました。
 別府という素敵な街に、あのようなステキなホールが誕生し、またそこに楽しむお客様がいらっしゃるのが素晴らしいです。
 今後ますますのご発展をお祈りしております。

「育む」
 最近の学生を見ていると、教えてもらおうという意識が目につきます。自分自身の目指す音楽を明確にし、いろいろな演奏から必要だと思うことをできるだけ多く盗み、1つのアドバイスは10に活用するくらいのつもりで、よく考えて取り組んでほしいと思います。
 そのためにも私たちは、何か少しでも盗みたいと思われるようなベストな演奏を心がけ、常に気を引き締めてコンサートに臨むつもりでおります。



ワディム・レーピン(ヴァイオリン)
 非常に楽しく演奏できました。アンコールを何回もしましたが、舞台から去りがたい気持ちがしましたね。今日のプロコフィエフは難しい曲で、非常に印象派的なところがある曲ですが、聴衆の聴き入る様子からエネルギーを感じました。私にとって最も大切なことのひとつが、演奏している時に聴衆の視線から感じる関心の強さなんです。それと、今日の演奏で最高だったのは、昨日のリハーサルとも全然違った感じになったことですね。リハーサルの時、アルゲリッチさんは音楽についてあまり語りません。以前クロイツェルを共演した時に「何か言いたいことがあるんだったら、楽器を通して言ってちょうだいね」と言われたのを覚えています。
 私は最近、特にプロコフィエフに夢中なんです。今日演奏した曲は、特にその和声が、まるで手で触れることができるように実体的な感じがします。さらにその和声をいろんな風に解釈することが可能です。おとぎ話のような曲ですが、それをシンデレラのように解釈することもできれば、まったく違う醜いものについてのお話として解釈することもできます。演奏するたびに違った受け止め方で演奏することができます。彼はパリやソビエト連邦など様々な場所に住んだ経験がありますが、どこに住んでいようとプロコフィエフの音楽なんですね。第二協奏曲は確か書き始めたのがパリで、オーケストレーションはスペインで行われたはずです。
 アルゲリッチさんと最後に共演したのは5年前だったと思いますが、共演の間隔が1日であろうと、1年であろうと、同じことです。仲の良い友達とは、独特の間柄があるでしょう? 2年間ほど何も話してなかったとしても、会って話し始めると最後にあったのが昨日のように思えてくる。今日は、音楽を通してそういう感じがしましたね。



伊藤京子(総合プロデューサー・ピアノ)
 音楽祭の歴史を大天才アルゲリッチと共に積み重ね18回を迎えられたということの重みを感じています。
 昨年に続き日本生命の皆様方のご支援を頂き、東京でのコンサートを開催でき、皇后陛下の御来臨を賜れたことは大きな名誉であったと思います。皇后陛下は地方での芸術振興の困難さもよくご存じであり、それだからこそお励ましの御来臨であったと思います。またこの度の熊本、大分の地震被害にたいしてのご心配もおありだったことと思います。
 ありがたく光栄なことと心から感謝を申しあげたいと思います。
 音楽祭は様々な果実を身につけていますが、教育はその中でも重要な柱となってきています。その方針の中で70年の歴史を記念して、毎日学生音楽コンクールへ財団からの賞を設けて頂きました。浜松市の国際ピアノコンクールへも同様な賞を提供させて頂き、国内の音楽家育成や教育的目的を持つ機関と連携出来たことは大きな意義があると思います。
 アルゲリッチとの地道な努力によってもたらされた成果は、大分県が芸術的に高いレベルにあることを国内外への発信にもなっています。このことは地方自治体にとっても大きな意義ある価値となっています。
 今後はこれまでの大分県にはなかった世界的な発信力と、また新しい社会的な芸術振興の在り方を示しているアルゲリッチが作ってきた実績をどのように大分県が活用をしていくのかは注目していきたいと思います。
 多くの注目を集め、世界を見てもここにしかないアルゲリッチハウスの活用も大分県の手中にその運命はある、といっても過言ではないと思います。東京文化会館や水戸を参考に地方での個性的な芸術文化創造の拠点にと願っています。
写真提供 (C) Rikimaru Hotta
→ 第18回別府アルゲリッチ音楽祭の記録 → 出演アーチストのプロフィール